バックローホーン開発ストーリー

エピソード01

今成氏により初代コンクリートホーン完成

オーディオマニアで発明学校の校長をされていた今成氏が、自分の発明品をその会場で発表しました。 それが初代コンクリート製スピーカー(右の写真)で四角いコンクリートの塊に10センチユニットが付き、 その中にどうやって造ったのか全長2.5メートルの迷路のような音道のトンネルが掘ってあるバックロード ホーンタイプで、その開口部から出る会場を揺るがす凄い音に全員があっけにとられていました。
新し物好きのわたしはすぐに一セット造ってもらい仲間に自慢していました。 部屋に遊びに来る友人達もこのスピーカーの音圧と生々しい音に驚いて帰りました。 その後も少しずつですが口コミなどで注文が来ていたようです。しかし氏は既に 別の新しい発明に夢中で注文を受けても納品に一年以上も斯かる状態でマニアから次第に 忘れ去られていました。

エピソード02

今成氏の意志を引き継ぎ

このまま素晴らしい可能性を秘めた、このスピーカーを埋もれさせてしまうのはもったいない、コンクリートで一体成形したバックロードホーンスピーカーなんて誰も思い付かないし、誰も造らない。何とか後を引き継いで製造することができないだろうか、このことを今成氏に了解いただき、 製作道具の受渡しと製造方法のノウハウを教えてもらうため後日会う約束をしました。 しかし、今成氏は、その約束の前に病に倒れられ数ヶ月の入院後他界されてしまいました。
恩師の意志を引き継ぐ意味でも、「どうしてもこのスピーカーを世に出したい!」
止むに止まれぬ欲求が込み上げてきました。 御遺族に生前の約束を話し、処分を免れた僅かの製作道具を譲り受け その道具から製作工程を想像し、数々の試作を繰り返しました。
トールボーイタイプや小型タイプ等いろいろなタイプも造ってみました。

エピソード03

素材からの研究

しかしコンクリート自体が持つ固有振動がどうしても音を硬くしてしまいます。そこでコンクリート素材の 改良から取掛かり、黒セメンを白セメントに、骨材である砂利を硅砂に替え、 さらに特殊な吸音チップを混ぜることでキンキンするコンクリート特有のキャラクターを消すことができ、 やっと納得できるエンクロジャーの素材のノウハウを得ることができました。

(数々の失敗作は我が家の庭の土止め石として活躍しています。)

 
エピソード04

直販の利点

平成2年、12センチユニットのAX(生産中止)を幕張のインターナショナルハウスウエアーショーに初出品。
その後も後継機、16センチユニットの「HoPe-twoBX」を同見本市の他、経済新聞やオーディオ誌等の 新製品紹介記事に数回掲載され、遠方からも注文を頂くようになりました。

購入された方から
「ブランドやデザインなんて関係ない、音が生々しいから買いました」

・・・東京の経営コンサルタント業

「ボーカルは特に素晴らしい、夜、電気を消して女性ボーカルを聴いているとその艶っぽさにエクスタシーすら感じる」
・・・北海道の会社員の方

「あまり宣伝しないで、裏街道で密かに売ってほしい。自分の物だけにしたい」
・・・新潟のピアノ調律師

「新潟でオーディオを造っているのが嬉しい。工場直販も造り手の顔が分かって良い」
・・・東京でオーディオ同好会をつくっていられる方

などのご意見やご感想の電話を頂き、これは直販ならではのもので大変励みになりました。

エピソード05

二重構造式にしたら(WCW-200A)

以前から20センチユニットを使った上級機を造りたいと思っていました。しかし、コンクリートで造ると 比重計算からそれは50Kg位になりそうで、とても流通に乗る商品にはならないとあきらめていましたが・・・

木板とコンクリートの二重構造にすれば、軽量化でき、しかも木の響きも加わり、より自然な音で鳴るはず。あるマニアの方からの提案を基に早速、オーク集製材を使って試作を始めました。
木製バックロードエンクロジャーの内側をモルタルを薄く塗り固めたものと想像して下さい。
コンクリート壁が薄い(7mm厚))ため乾燥時のヒビ割れ等に苦労しましたが、(小野田セメント様の技術指導を受け解決できました)
HoPe-twoBXのクリアーな音質をそのまま引き継ぎ、大型化と木の響きが加わる効果で より自然な音場感に溢れた音質になり、
音圧も96dBを達成しました。

世界初の二重構造BOXバックロードホーンスピーカーの完成です。
(写真内部の白い部分がコンクリートです)

エピソード06

オーディオショー出展

しかし、新潟の当社に大切に飾っておいても誰も聴きに来ていただけない。
そこで、かねてから考えていた音出しのできるオーディオ見本市へ参加することにしました。
1998年9月、秋葉原で開催の真空管オーディオフェアーに初出展。このフェアーにはオーディオ歴の長いハイエンドマニア達が4千人以上集まりますが、その人達から、予想以上の反響を頂ききました。
写真左下のお二人(目のご不自由な方でした)はサックスやボーカルの曲に「ウットリする、まるで生演奏だ」と感激され拍手まで頂きました。

また、会場入口で受付のアルバイト嬢が「WCW-200A」から流れた女性ボーカルのCDを会場内でライブをやっていると勘違いされたと言う話しを後で聞きました。
試聴室での比較試聴会(写真右)もあり、 真空管アンプを除く部門賞でファン投票の結果、金賞を受賞することができました。

同年10月、有明けビッグサイトでのオーディオエキスポ’98にも出品。
各ブースが音出をする悪い環境でしたが、
「このうるさい会場で、こんなに音がハッキリ聴き取れるとは驚きだ」
「凄い、まるで生演奏を聴いているようだ、僕もバックロードホーンを自作するが、これほど生々しい音は出ない。」
「デザインはイマイチだが、何て生々しい音だ!」
など多くの評価や意見をいただきました。会期後に数台ですが注文をいただくことができました。

エピソード07

ショーの会期中に関係問屋さんからのアプローチもありましたが、やはり直販にこだわりたい。
問屋さんに販売を任した方が多くの台数が売れるかも知れません。しかしお客様から
直接に注文を頂ければ、お客様個人のご要望に叶う製品も造れるし、ヒントも頂けます。

一台一台を手作業で仕上げ、納品後にお客様から、ご感想やご意見の電話を頂けるのが一番の楽しみです。
手作業のためどうしても価格が高めになるのが心苦しいですが、それでも直販ゆえに流通経費を掛けなくても済みます。

私達はこのスピーカーを気長に地道に販売できればと思っています。
知名度の無いブランドなのでそう簡単に多くの注文を頂けるとは思っていません。
雑誌広告も、あの小さなスペースでは、このHPの1/100も語れません。(本音・・・お金が無い)
じっくり試聴して頂き、この音質に心からご満足頂いた方に納品できることを望んでいます。 また、殆ど全行程を手作業で製作するため、 どのみち少量しか生産できませんが。

この音質の素晴らしさを少しでも多くの方に知って頂きたい為に、音出しのできる オーディオエキスポなどの見本市にできるだけ出展を続けたいと思います。
もし、機会がありましたら是非会場にお越し下さい。
その際には「ホームページを見た」とお声を掛けて頂ければ光栄です。